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忘れられた巨人 The Buried Giant
2016年04月16日 (土) | 編集 |
忘れられた巨人
忘れられた巨人カズオ イシグロ Kazuo Ishiguro

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◆日本語字幕付きインタビュー映像


◆Why are so many people snobby about fantasy fiction?
Episode 145: Kazuo Ishiguro
↑インタビュー記事と一時間ほどの音声が収録されています。
日本語記事→英語記事→音声と読み、聞いていくと
分かりやすかったです。

最後の方はイシグロ氏からインタビュアーへの
SFやファンタジー小説についての逆インタビューに
なっていました^^

・・・・・・・

日本語版で読みました。
アーサー王伝説辺りの時代のイギリスを舞台にした
ファンタジー小説。

忘却の霧に包まれた世界を老夫婦が旅します。

ロールプレイングのようなストーリーを通して、
民族や共同体として過去の残虐な記憶と
どのように対峙していくべきか、を
問題提起している本です。

作者インタビューでは、ベルリンの壁が崩壊して
ヨーロッパに平和が訪れると思った直後、
ボスニア・ヘルツェゴビナの紛争が起こり
衝撃を受けたことがきっかけのひとつになっている
ということでした。

もちろんどの国にも忘れたい、忘れようと意図している、
忘れてしまった、加害者としての記憶があるので、
それらをどう対処したらいいのか、それぞれ考えて
いかなくてはいけないということで。。

まあ、いったん保留にするしかないんじゃないですかね。
でも、いじめを考えると被害者は覚えていることを
加害者はまるっと忘れていたり、というか覚えていなかったり
するので、加害者であったことはずっと記録、記憶に
留めておいて、二度と一方的な加害者にはならないよう
自戒するってことでしょうか。

一方小説のもう一本の柱は夫婦の関係で、
最後の妻の行動、言動に違和感があったのですが、
他ブログにさらっと書かれていたことを読んで、
なるほど、と。

どこかに、
ラブストーリーとは結婚した後の夫婦の葛藤から始まる、
と書かれていましたが、
世の中には何億人と人がいるのに、
たった一人の同じ人と(もしくは2,3人の?^^;)
何年、何十年も一緒に時を重ねていくって、
すごいことですよね。

愛とかってよくわからないけど~♪
まあ、性格のいい人と結婚できてよかった^^

よく思うんですけど、
自分の性格が良くて、問題のある性格の人を結婚するのと、
自分が問題のある性格で、性格の良い人を結婚するのでは、
どっちがいいですかね?

自分にないものに魅かれる、という点から、
両方「いい人」ってあんまりないような気がするんですが。

ま、さいばら流に、自分の点数を上げないと点数の高い人と
つき合えない、というのもあるけど。

カズオイシグロの小説というと、
信頼できない語り手unreliable narrator
ですが、
この小説では、そもそも人の記憶が失われている
ので、記憶を改ざんできないんですよね。
年をとって認知症、というより穏やかな感じがするのは、
自分以外も忘却の霧に覆われているから?

老夫婦でよろよろと手に手を取り合って、
困難な旅を前に進んでいく、というのは、
自分も年をとったらこういう関係でありたい、
と思えて良かったです。

でもこの主人公のキャリアを思うと、
つらい話だなあ。

◆以下引用(ネタバレしています)

強い絆で結ばれていて、一緒に渡りたいという夫婦には、一番大切に思っている記憶を話してくれるようお願いします。もちろん別々に。まず一人に聞き、つぎにもう一人に聞きます。この方法で、二人を結ぶ絆がどんなものかがわかります。
p58

If it's a couple such as you speak of, who claim their bond is so strong, then I must ask them to put their most cherished memories before me. I'll ask one, then the other to do this. Each must speak separately. In this way the real nature of their bond is soon revealed.'
p49

いまあの光景がアクセルの心をわしづかみにし、同時にアクセルを恐れさせた。見知らぬ人間からーーーそれも、危険な敵にもなりうる人間からーーー親切な言葉を二つか三つかけられただけで、ベアトリスはすぐに世界への信頼を取り戻した。その考えはアクセルを不安にし、すぐ横で寝ている肩にそっと手を滑らせたいという思いにさせた。だが、待て。思えば、ベアトリスはいつもそうだってのではないか。それもまたベアトリスというかけがえのない存在の一部ではなかったのか。そうやってとくに大きな痛手も受けず、ベアトリスはこの長い年月を生き抜いてきたのではなかったか。
p177

He recalled Beatrice's expression as she had stood before the bridge, changing from grave and guarded to the softly smiling one so dear to him. The picture now seized his heart and at the same time made him fearful. A stranger --- a potentially dangerous one at that --- had but to say a few kindly words and there she was, ready to trust the world again. The thought troubled him and he felt the urge to run his hand gently over the shoulder now beside him. But had she not always been thus? Was it not part of what made her so precious to him? And had she not survived these many years with no great harm coming to her?
p150

最悪の行為をベールで覆い隠しておいて、どうしてそれを償いなどと呼べるのでしょうか。あなた方キリスト教徒の神は、自傷行為や祈りの一言二言で簡単に買収される神なのですか。放置されたままの不正義のことなど、どうでもいい神なのですか」
(中略)
あなた方キリスト教徒のいう慈悲の神のもとでは、人は強欲に衝き動かされるまま、土地を欲しがり、血を欲しがる。わずかな祈りと苦行で許しと祝福が得られるとわかっていれば、そうならざるをえません」
p196

How can you describe as penance, sir, the drawing of a veil over the foulest deeds? Is your Christian god one to be bribed so easily with self-inflicted pain and a few prayers? Does he care so little for justice left undone?'
'Our god is a god of mercy, shepherd, whom you, a pagan, may find hard to comprehend. It's no foolishness to seek forgiveness from such a god, however great the crime. Our god's mercy is boundless.'
'What use is a god with boundless mercy, sir? You mock me as a pagan, yet the gods of my ancestors pronounce clearly their ways and punish severely when we break their laws. Your Christian god of mercy gives men license to pursue their greed, their lust for land and blood, knowing a few prayers and a little penance will bring forgiveness and blessing.'
p173

いま思うのは、何か一つのきっかけで変わったのではなくて、二人で分かち合ってきた年月の積み重ねが徐々に変えていった、ということです。結局、それがすべてかもしれません。ゆっくりしか治らないが、それでも結局は治る傷のようなものでしょうか。ごく最近の朝のことです。夜明けが春の最初の兆候を運んできました。部屋には朝日が射していましたが、妻はまだ眠っていて、わたしはその寝顔を見ていました。そのときです。わたしの中の最後の闇がついに去ったと感じたのは。それでこの旅に出る決心がつきました。
p405

But tell me, friend, what is it made you break your resolve of so many years and come out at last on this journey? Was it something said? Or a change of heart as unknowable as the tide and sky before us?'
'I've wondered myself, boatman. And I think now it's no single thing changed my heart, but it was gradually won back by the years shared between us. That may be all it was, boatman. A wound that healed slowly, but heal it did. For there was a morning not long ago, the dawn brought with it the first signs of this spring, and I watched my wife still asleep thought the sun already lit our chamber. And I knew the last of the darkness had left me. So we came on this journey, sir, and now my wife recalls our son crossing before us to this island, so his burial place must be within its woods or perhaps on its gentle shores.
p357

「わたしはな、お姫様、こんなふうに思う。霧にいろいろと奪われなかったら、わたしたちの愛はこの年月をかけてこれほど強くなれていただろうか。霧のおかげで傷が癒えたのかもしれない」
p410

'Tell me, princess,' I hear him say. 'Are you glad of the mist's fading?'
'It may bring horrors to this land. Yet for us it fades just in time.'
'I was wondering, princess. Could it be our love would never have grown so strong down the years had the mist not robbed us the way it did?' Perhaps it allowed old wounds to heal.'
p361


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